熱すぎる応援団! メイドイン徳島のアニメ誕生秘話|経速ナビ

2017年08月21日

熱すぎる応援団! メイドイン徳島のアニメ誕生秘話

1: 名無しさん 2017年08月21日 06:12:00 ID:0.net

熱すぎる応援団! メイドイン徳島のアニメ誕生秘話
商店街でのアニメ「ヒノマル!」上映会の様子


日本は、新しいものを創るのが苦手だと言われている。それは、ルールを守ることに長け、ルールを作ることに慣れていないからだ。しかし、日本を変えていくのは「新しいゲームやルールを創る」ことができる人々だ。彼らは何を考え、どのように動いているのか?

徳島県に住む人を中心にした6人のメンバーで制作されているテレビアニメがある。2017年7月からケーブルテレビ徳島で放送が始まった「ヒノマル!」だ。徳島県阿南市出身の漫画家である大東優也氏の漫画を原作にしたアニメである。ある一族のたった1人の生き残り、ヒノマルが仲間と冒険をしながら世界を救うというストーリーだ。

「ヒノマル!」は県内にとどまらず、全国から注目を集めている。元々は徳島発の漫画雑誌で連載されていた作品が、ひょんなきっかけからラジオドラマ化され、ついには熱心なファンの応援でテレビアニメ化にまで至ったからだ。おまけに、アニメの制作チームの面々は全員が未経験者だというのだ。

「ヒノマル!」のアニメを制作しているのは、「ヒノマルプロジェクト」というクリエイター集団である。プロジェクトの牽引役は合同会社「STUDIOSOL」の代表、丸山貴成さん。イラストレーターやFlashムービーを作っていたWebクリエイター、声優など制作に関わる人たちが自主的に集まり、ラジオドラマやアニメの制作のほか、まんが教室の開催、イベント参加など多様な活動を展開している。

アニメーションや映画制作などは東京で挑戦する人が多い。そんな中、なぜ徳島で生まれたこのプロジェクトが注目され、クリエイターを引き寄せるのか。丸山さんに話を聞いた。


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「ヒノマル!」の主人公ヒノマル


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演劇青年が地元、徳島でクリエイター支援へ

徳島で県立高校を卒業した丸山さんは北海道の大学へ進学し、そこで演劇を志した。当時は大泉洋氏が所属していたことで有名な「TEAMNACKS」が活躍しており、北海道の学生たちの中で、演劇は盛り上がりを見せていた。丸山さんも札幌でプロアマ混合劇団の旗揚げに参加。俳優としてのキャリアをスタートさせる。25歳までは札幌で演劇の活動を続けていたが、就職をきっかけに演劇活動をストップさせた。

2004年に徳島県に戻ることになるが、そこで県内のアマチュア劇団に参加し、演劇活動を再開させた。地域のイベントや演劇の演出にも関わる中で丸山さんが感じたのは札幌との温度感だという。

ちょうど札幌で演劇が盛り上がっていた時期を経験していることもあるが、演劇を取り巻く徳島の環境は、札幌とは大違いだった。丸山さんは次第に、徳島で全国に通用する俳優を目指すのは難しいだろうな、と感じるようになる。

「徳島に戻ってからもアマチュア劇団で活動をしていました。でも、手応えを感じられなかったんです。見に来てくれる人も多くはいない。徳島で夢を持てるようにはならないのかな、と感じていました」


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丸山貴成さん。徳島の空港でお話を伺った


徳島に戻って10年、2013年に転機は訪れる。劇場に足を運んでもらわなくても、少しでも多くの人に演劇の世界を知ってもらえたらとコミュニティラジオの枠を自腹で購入。それが現在も続くラジオ番組「金曜ゴールデンシアター」だ。この番組では、年間30話近いリスナー参加型のラジオドラマを放送している。

丸山さんはもともと役者として活動していたが、「役者にこだわっているわけではなく、何かを生み出すということに喜びを感じます」という。だから、ラジオドラマを制作する際も、プロデューサーからキャスティングまでどんな役割もこなす。

そのこだわりのなさが、ラジオドラマにイラストを付けるという発想に至り、そこで出会ったのが漫画家の大東優也氏だった。

「脚本家を探しているときに大東さんに出会いました。漫画家を探していたわけじゃないんだけど、と思いながら会ったのですが、『ヒノマル!』を読ませてもらった瞬間に、これは面白い!と感じました」


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アニメのアフレコの様子


“俳優”ではなく“声優”募集で応募が殺到

大東優也氏の漫画「ヒノマル!」をラジオドラマでやってみよう。そう考えた丸山さんは、さっそく準備にとりかかる。これまでは脚本を書いて、それを俳優に声で演じてもらっていた。しかし、今回は漫画である。

「キャストを募集する際に、俳優ではなく『声優』募集としたんです。SNS上でも告知をしたところ、それまでは1、2人だったのに80人以上の応募がありました。県外の人もいたことに驚きました。これはネットを使っての告知の効果もあると思いますが、声優という言葉に興味を持った人が多かったんだと思います」


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「ヒノマル!」イベントの様子。地域のイベントに参加するごとに認知や注目を集めている


実は徳島県や高知県では、アニメによる地域活性化が活発に行われている。徳島では『マチアソビ』が、高知では『まんさい』というアニメイベントが町全体を巻き込むように開催されている。そのイベント内でも人気声優が登場するコンテンツは大人気だという。声優という職業について憧れを持っている人が多いのだろう。しかし、地元では声優として活動できる機会は少ない。東京へ行かないと難しいというムードは蔓延していた。そこに、この募集である。チャンスをつかみたい人たちが飛びついた。

「都内からも応募はあったのですが、できるだけ地元周辺の方にお願いするようにはしました。交通費も出せませんし・・・」

「ヒノマル!」はラジオドラマとして2015年春にスタートし、開始当初から大きな反響を呼ぶ。リスナーから「面白い」「続きが気になる」といった、これまでにない声が続々と寄せられた。

急速に話題を集める「ヒノマル!」にラジオ局も協力をしてくれるようになってきた。

「イベントに出る際にブースに看板を出してくれたり、次の展開を他の番組で応援してくれたり、徐々にラジオ局のみなさんも巻き込み、大きくなっていきました。やはり話題になると、多くの人が参加したくなってくれるようです」


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イベントやプロモーション活動では丸山さんも参加することが多い(右)


周りを巻き込むことで、参加するクリエイターたちも増え、「ヒノマル!プロジェクト」として動き出す。「ヒノマル!」はついにケーブルテレビでアニメ放送されることが決定したのだ。

7月5日からスタートした全12話の制作に向けて忙しい日々を送る丸山さん。資金繰りや制作進行に奔走しているが「いい刺激があると一気に盛り上がる」という空気を楽しんでいるという。

「アニメに関しては素人なので、いいものを作れているかどうかが分からないという不安はあります。でも、やめるということは考えていません。私の長所は、人に任せることができることです。もともと役者をしていたけれど、表現という舞台を作り上げるためには、自分が役者でなくてもいいと思うんです。だからこそ、新しい流れにも乗って柔軟にプロジェクトに進めることができるんでしょうね」

参加者は全員素人。アニメの監督経験者もアニメーター経験者もいない。しかし、アニメは出来上がった。

「参加してくれた人たちも、本来は東京で夢を実現したいと思っています。ただ、まだ学生だったり、副業があったりするため、まずは地元徳島の中で携わることができればと思っているんでしょうね。アニメーターをやってくれている人は、未経験で、WebのFlashでアニメは作ったことがある程度。それでも勉強しながらやってくれています」

徳島で夢を持てるように、と思っていた丸山さんだが、確実にその思いは形になっている。

「長く続けてきて、ありがたいことに応援してくれる人が増え、実際の反響を実感することができるようになりました。徳島では、東京と違って、本気でやればすぐに一番になれる可能性があります。一番になれば次のステージを目指すことができます。先ほど、徳島で夢を持てるようになってほしいと話しましたが、この活動を見てほかの人たちにも可能性やチャンスを感じてもらいたいですね」

つまり、東京にいるとアニメ制作はレッドオーシャンだが、徳島ならブルーオーシャンということだ。そして、ブルーオーシャンで目立つことで、レッドオーシャンでも目立つ可能性がでてくる。丸山さんは、徳島をクリエイターが最初に目立つ場所として考えているのだ。


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アニメ化が決定したことを伝えるポスター


多くの思いをのせて放送が始まった「ヒノマル!」。これまでプロユースの機材や経験ある人材が必要と思われていたアニメも、デジタルの普及で様々な取り組みが行えるようになってきた。本プロジェクトのように各地で作られた作品が、その街はもちろん、東京で流れるということも当たり前になっていくのではないだろうか。

 


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丸山貴成(まるやま・たかしげ)氏
「ヒノマルプロジェクト」代表/合同会社STUDIOSOL代表
徳島県阿南市出身。大学在学中に札幌にてプロアマ混合劇団の旗揚げに参加。2004年に徳島に帰郷し県内アマチュア劇団に参加。2013年より徳島のコミュニティ放送局エフエムびざんにてパーソナリティ活動を開始。番組プロデュースも手がける。2015年4月からスタートした「ヒノマルプロジェクト」ではプロデューサーを務めるほか、ラジオドラマ「ヒノマル!」の演出や声優としても活動。合同会社STUDIOSOLを設立後はTVアニメ「ヒノマル!」の制作もスタートさせた。

筆者:中村祐介

名前 :
http://keisoku-navi.com/