「米ぬか繊維」は足のガサガサの救世主だった|経速ナビ

2017年10月23日

「米ぬか繊維」は足のガサガサの救世主だった

1: 名無しさん 2017年10月23日 06:00:00 ID:0.net

「米ぬか繊維」は足のガサガサの救世主だった

米ぬか靴下「歩くぬか袋」(写真:鈴木靴下)

米ぬか靴下をご存じでしょうか。その名も「歩くぬか袋」といいます。

米ぬかといえば、玄米を白米に精製するときに出る皮や胚の部分。普通はそのまま廃棄します。時々、米ぬかを化粧品にしてお肌をつるつるにするのに使う、というのは聞いたことがあります。

でもそれを靴下にするとはどういうことでしょうか。そもそも、なぜ靴下なのでしょうか。

「もったいない」の気持ちから米ぬかパワーの活用へ


「米ぬか繊維」は足のガサガサの救世主だった

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米ぬか靴下を製造販売しているのは、奈良県三宅町の「鈴木靴下」です。ここの鈴木和夫社長が考えたので、必然的に商品は靴下になりました。

奈良県はもともと国内生産量トップの靴下の一大産地です。しかし近年、中国や東南アジアからの安価な輸入品に押され、2000年には300社を超えていた奈良県靴下工業協同組合の会員数は今や半分になりました。そんな中、もともと子ども用靴下を生産していた鈴木靴下は、サッカー選手用靴下に切り替えて生き残りを図ります。


「米ぬか繊維」は足のガサガサの救世主だった

鈴木社長(写真:鈴木靴下)

今や、サッカー用ソックスの受託生産で国内シェアの約2割を占めるまでになりました。1993年のFIFAワールドカップ・アジア予選、また1998年のフランス大会で、サッカー日本代表チームの着用したストッキングは、OEM(相手先ブランドによる生産)で同社が製造しました。また現在も、Jリーグなど多くのクラブチームのストッキングをOEMで生産しています。

その一方で、実は鈴木社長の実家は、1ヘクタールでおコメを栽培する兼業農家です。精米時に出るぬかは、漬物ぐらいしか使い道がありません。廃棄前の大量に積み上がった米ぬかを見て、鈴木社長は常々「もったいないなぁ。これを使って何かできないか」と感じていました。

老化した角質を除去する成分がある

あるときふと、子ども時代の記憶がよみがえります。「小学校の頃、廊下をぬか袋で拭いたらツルツルになったな」。そういえば母親も、ぬか床で漬物を作っていたので手がきれいだった、と思いました。それなら米ぬかを素材に使った靴下を作れば、足がツルツルになるのでは、と考えました。


「米ぬか繊維」は足のガサガサの救世主だった

おコメ(資料提供:鈴木靴下)

米ぬかは、玄米の重量のうちわずか10%ですが、しかし全体の約75%に相当する栄養成分が含まれています。中でもγ-オリザノールとフェルラ酸という天然成分が注目されています。γ-オリザノールは、美と健康の源といわれ、皮膚の血行をよくして皮脂の分泌を促進し、肌の表面を保護します。さらに紫外線をブロックして、老化した角質を除去する作用があります。またフェルラ酸は、おコメのポリフェノールとも呼ばれ、美白効果があり抗菌作用があります。

江戸時代、銭湯ではぬかが売られ、ぬかを入れる袋も番台で借りられました。ぬか袋で体をこすると、汚れがきれいに取れ、肌もしっとりすべすべになります。ぬかに、保湿効果、美白効果、肌のきめを整える作用があることを昔の人は経験的に知っていたのです。

おコメは、私たち日本人には食生活に欠かすことのできない食べ物です。そして世界で半数以上の人々がおコメを主食としています。米ぬかは、人類がおコメを食べるかぎりなくならない無限の天然資源といえます。そう考えた鈴木社長、ぜひとも米ぬか靴下を製品化しようと奮い立ちました。


「米ぬか繊維」は足のガサガサの救世主だった

鍋で靴下を煮込む(写真:鈴木靴下)

最初は、おでんのように鍋に米ぬかと靴下を詰め込んでぐつぐつ炊いてみました。しかし、干して乾燥してみると、付着した米ぬかが飛び散ってしまいます。

当時高校生だった長女の鈴木みどりさんは、その様子を見て「お父さん、どこかおかしくなったんやろか」と思ったそうです。

1年がかりで手作りの米ぬか靴下を完成させた

素人考えでは打開できないと考えた鈴木社長は、米ぬかの専門家で和歌山県工業技術センター化学技術部長(当時)の谷口久次さんに教えを請うことにしました。主要成分γ-オリザノールの効能や米ぬか成分の抽出方法を学び、1年がかりで手作りの米ぬか靴下を完成させます。

ようやく出来上がった試作品の靴下を約70人のモニターに履いてもらいました。「ツルツルする」「あったかい」といった期待どおりの反応に交じって、「数回洗ったら効果が薄れた」といった厳しい指摘もありました。

このアンケート結果を携え、谷口部長に紹介してもらった米油製造最大手・築野食品工業(和歌山県かつらぎ町)と紡績業者のオーミケンシ(大阪市中央区)を訪問し、協力を仰ぎました。試行錯誤の結果、繊維自体がスポンジ状で小さな穴があるレーヨンに米ぬか成分を保持させる技術指導を受け、業界初となる米ぬか美肌成分の練り込みに成功します。商品名は鈴木靴下の頭文字をとって「米ぬか繊維SK」と名付けました。


「米ぬか繊維」は足のガサガサの救世主だった

米ぬか繊維SK(写真:鈴木靴下)

この繊維を使った靴下は風合いもよく、約50回洗濯しても機能が持続します。2006年、「歩くぬか袋」として販売を開始しました。インパクトの強い商品名には、開発に懸けた鈴木社長の熱い思いが込められています。

早速、カバンに商品を詰め込み、東京の大手生活雑貨販売店に飛び込みました。しかし、会社はOEM生産が中心だったため、販売のノウハウがありません。何度も追い返され、ようやく担当者に会えても「一言で商品の説明を」と求められて返答に窮しました。

そこで2007年、モニター実験を民間研究機関に依頼。1カ月余りの着用で、皮膚の保湿効果があることが確認できました。アンケートでも「かゆみが抑えられた」「シワが気にならなくなった」などの好意的回答が数多く寄せられました。それらを踏まえ、キャッチコピーを「履くだけで、かかとスッキリ!」と決定。商品の特長を一言で表せたことで、東京、大阪の百貨店や雑貨店に置いてもらえるようになりました。

その後、米ぬかオイルを配合したシリコンをかかと部にプリント加工。当時としては斬新なアイデアの「かかとケア靴下」も開発しました。

こうした地道な努力の積み重ねで、「歩くぬか袋」第1号発売以来約10年、1万足が一般的といわれる靴下業界で、シリーズ累計30万足の大ヒット商品になっています。

子どもからおじいちゃんまで広がるマーケット

今までのようなOEM生産だけでは靴下しか生産できませんでしたが、「米ぬか繊維SK(綿・レーヨン素材)」というオリジナル素材を開発したおかげで、ほかのアイテムにも可能性が広がりました。レッグウォーマー、ネックウォーマー、おやすみ手袋といったアイテムも自社で企画しています。


「米ぬか繊維」は足のガサガサの救世主だった

お風呂ミトン(写真:鈴木靴下)

最近では、「米ぬか繊維SK」をさらにやさしく進化させ、上質なタオルのように仕上げた新素材「Kram(クロム)」を開発。業界内で注目を浴び始めています。この素材で作った「米ぬかお風呂ミトン」を、社内で試用してみました。敏感肌の従業員だけでなく、小さなお子さんからも「お母さんがミトンで背中を仕上げ洗いしてくれると、すごく気持ちがいい」と好評です(11月ごろより販売開始予定)。

売り場面積も広がり、靴下売り場から生活雑貨の売り場にも展開し始めています。鈴木社長は、将来は「米ぬか繊維」関連の売り上げを現在の20%弱から50%まで高めたいと考えています。

こうした新分野の開拓には、先程登場した長女のみどりさんや製造現場によるアイデアが大いに役立っている、と鈴木社長は言います。社長を含めた5人で開発チームを発足。大手パジャマメーカーや肌着メーカーともコラボを進め、さらなる新規マーケット開拓に挑戦中です。


「米ぬか繊維」は足のガサガサの救世主だった

左からみどりさん、社長、会長(写真:鈴木靴下)

そのみどりさん、元CAでしたが、「歩くぬか袋」がヒットして家業が忙しくなったこともあり、会社を手伝うことにしました。最近の心配は、「鈴木靴下」創業者の祖父(現会長・鈴木勇一氏)の足のむくみです。通常の靴下のゴムを切っても痛そうで、ゴムなし靴下でも「きつい……」と言います。祖父が笑顔になる締め付けない靴下を作りたい、と社長である父や従業員と共に開発を進めました。

試作品を作っては「おじいちゃん、どう?」と履いてもらいました。そして試行錯誤の末、ようやく祖父の満足する靴下が出来上がりました。本当に満足するものでないと納得しない祖父が、今ではその靴下しか履かないそうです。

この優れモノを、足のむくみで悩む世のおじいちゃん、おばあちゃんにも提供しようと考えました。柔らかな履き心地で締め付け感がなく、ずれにくい特殊構造になっています。もちろん素材は、「米ぬか繊維SK」です。商品名は、「締め付けない靴下おじいちゃんいかがですか?」(女性用は「締め付けない靴下おばあちゃんいかがですか?」)にしました。開発中、みどりさんと社長の口癖になっていた「おじいちゃん、どう?」が由来です。ユニークなネーミングですが、ご老人方へのわかりやすさを優先しました。

開発に数千万円を要した自信作


「米ぬか繊維」は足のガサガサの救世主だった

祖父母着用(写真:鈴木靴下)

鈴木社長は「米ぬか繊維は肌に優しく、これ以上の糸はできない。開発に数千万円を要した自信作です」と言います。そして米ぬか繊維は、肌の乾燥や静電気、そして生地の滑らかさなどから、アトピー対策にも有益です。静電気が体にたまるとホコリが肌に付着してアトピーの原因となりますが、こちらは帯電性が低いのでその心配が少ないのです。2011年から、「米ぬか繊維SK」を使った多くの商品が「日本アトピー協会推薦品」となっています。

「米ぬかは子どもがなめても安全で、環境にも優しい。新開発の靴下は、おじいちゃんおばあちゃんにぜひ履いてほしい。今後も、お客様の悩み解決といったテーマを明確に掲げ、中小企業のモノづくりの底力を発揮していきたい」と鈴木社長。

古来、横綱の綱は、米ぬかと共にもみ込むことで柔らかくなりツヤが出るのだといわれてきました。日本の国技にも陰ながら貢献しているのです。米ぬかという日本独自の素材を生かして、鈴木靴下がグローバル化の荒波を力強く乗り切っていくのを期待したいと思います。


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